鯖の塩焼き

よく1人でインタビューを受ける。

1人でというのは本当にそのまんまの意味で、自ら質問し、自らが答える。内容は様々だ。好きな音楽、昨日見た映画の批評、最近の近況、何故これ程肉は美味いのか?。

これらは常に行われる。家のみならず、通勤途中、会社のトイレ、服屋の試着室、本当にありとあらゆる所。演者は私のみなので案外気楽だ。元々同居人に私の声かと思ったら風の音だったと言われるぐらいどこにも反響しない声なので、周りに聞かれる事もない。(因みにこれ程の小ささだと電車内で薄く歌っても全く気付かれない)

イマジナリーフレンドともちょっと違う。何故なら常に私はインタビューを受けている側であり、相手はしている側だ。更に、相手は不特定多数で常にぼんやりしている。

しかし、共通していることは「私があらゆる苦痛を成し遂げ何かを達成した後、それを穏やかに語る人物」であること、「それを相手は興味津々で聞いている」事だ。私は自らを讃え、憧憬の目で見つめてくる不特定多数を、菩薩のような揺るぎない目で見つめるのだ。これを毎日している。それも何度も。

過剰な自己陶酔と自尊心の現れだと分かっていながら、それを止める事ができない。実際の私は人と話す際は目も合わせず、吃りがちで全くにこやかではない。常に理想と現実の乖離を感じながら、それでも私と私のインタビューは今日も続くのだ。